初期が好き

音楽の世界でも文学の世界でも、ファンというのは

何かにつけて初期の作品が好きだなと思う。

初期が好きだし、「初期が好きだ」と言いたい。

私だって、熱狂的なファンではないにしても

スピッツは「ヒバリのこころ」が好きだし、

安室ちゃんのファーストアルバムに収録された

「わがままを許して」という曲は名曲だと思う。

あとに出たどんなヒット曲もあんな風には心を撃ち抜かない。

でも、あんまり言わないようにしている。

物を作る人間の端くれとして「初期が好きだった」と言われるのは

嬉しくないことはないにせよ、前向きになれることでもない。

それに、そういうファンってちょっとカッコ悪いなとも思う。


村上春樹作品を昔から読んでいる人が

「初期三部作だけは好き」

と言うのをわりとよく聞くけれど、私はかならずしもそうとは限らない。

『騎士団長殺し』だってしっかり好きな作品だった。

と言いながら、書くべきほどのものを持っているのは

初期三部作の2番目にあたる『1973年のピンボール』。

矛盾というか、なんというか。


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